III. 名畑塾

2023/10/21 名畑塾 病害虫診断カード(No.551)

作物シラカシ
依頼月日・依頼者令和5年10月21日富山県総合運動公園

症状:
樹体表面にさまざまな形状のこぶを形成する。大きさは径1~15cm内外のものまであり大きくなると互いに融合してさらに大きさを増すのが認められる。また、樹体の片側に形成されることが多い傾向があった。


全景

下位こぶ

中位こぶ

上位こぶ(一部に潜芽からの抽出枝あり)

顕微鏡的所見

原因:
既往の報告から、本症状は根頭がんしゅ病細菌の寄生によって形成された「こぶ症」である。なお、本症状はイヌグス、アメリカヤマボウシ、エゴノキでも認められた。

樹木の『こぶ』についての既往の見解

名古屋大学町田泰則名誉教授によれば、アグロバクテリウム・ツメファシエンス;Agrobacterum tumefaciensという植物に寄生する根頭がんしゅ病細菌が樹木の地際部に感染し、一次こぶ(First gall)を形成、一次こぶの中で増殖した細菌が維管束や細胞間隙を伝って体内を上方に移動、傷ついた細胞に出くわし増殖すると二次こぶ(Secondary gall)ができる。この二次こぶが樹木のこぶ症として観察されるものである。
Agrobacterium tumefaciensは植物細胞に感染して自身のDNAを感染細胞に送り込む遺伝子を有する。そして、植物ホルモンであるオーキシンやサイトカイニン合成に関与する遺伝子が樹木細胞の染色体内に送り込まれると、この遺伝子がコードされてこぶが形成されるのではないかと考えられる。
植物ほるもんのうち、
サイトカイニン機能が上昇するとこぶの表面に異形葉や芽ができ、
オーキシン機能が上昇すると異形な根をもつこぶができ、
両者ともに機能が上昇すると不定形で大きなこぶができる
と考えられている。
※こぶは、クルミ、アーモンド、リンゴ、バラなどで認められる。
※※Agrobacteriumの植物細胞に感染してDNAを送り込む性質は、遺伝子組み換植物(組換DNA)作出に広く利用されている。
出典:日本植物生理学会 http://jspp.org/hirobaq_anda/detail.html?Id=2540


エゴノキ

イヌグス

アメリカマボウシ
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